ベトナム在住日本人インタビュー②日本語講師:内野先生

ベトナム在住日本人インタビュー②日本語講師:内野先生

日本人インタビューシリーズ、第2回目です。
前回はベトナムで「VIETICH」という、ウェブサイトを運営している「ハルカさん」にインタビューをしました。Cuộc phỏng vấn cô gái người Nhật hiện đang sinh sống tại Việt Nam

今回は、ハノイ国家大学外国語大学で日本語講師をされている、内野うちの先生にインタビューのお時間をいただくことができました。ベトナムで内野先生が、どのような「想い」で日本語の指導をされているのか、みなさんにご紹介したいと思います。

これをきっかけに、日本語学習のモチベーションにつながる人が増え、また日本語学習を始めるベトナム人が増えることを願っています。

内野先生のプロフィール

2012年よりハノイ国家大学外国語大学で日本語を指導。前職は日系大手メーカーでマーケティングに従事。1989年から2000年まではフランス、2001年から2004年まではアメリカに駐在し、100人を超える現地スタッフを抱える管理職としてご活躍。
2005年から同社人材開発部門(日本)に帰任したことをきっかけに、「日本語教育」に興味を持たれる。定年後のキャリアとして、59才のときに日本語講師を志し、日本語教師養成講座を修了、東京での日本語教師を務めたのち、知人の紹介を通じて現職に至る。
高校時代から「ラグビー」を趣味とされ、現在もハノイで「タッチラグビー」のチームに所属している。(お写真はラグビー試合中での1枚、ステキな笑顔です。かっこいい!)

インタビュー

内野先生、本日は貴重なお時間をありがとうございます。


Q1.内野先生が日本語教育に関心を持たれた「きっかけ」を、教えてください。

A.これまで15年にわたる海外勤務を経験し、日本と現地文化の違いに気づき、異文化の洗礼せんれいを受けていました。この経験から、「日系企業で働く外国人の抱える問題」、「日本人管理職の抱える異文化問題」に関心が強まりました。

2004年当時、日本の会社では、海外赴任者の日本人に英語教育をすることが主流とされていましたが、技術専門職の方々にとっての第2言語習得は難しいものでした。私は海外工場では「現地スタッフ」に日本語を教えることが、効率的であり、今後の主流になると、社内で訴え続けていました。

以前は日本語人材は限られており少数の日本語人材に頼ってしまうとリスクが大きくなることが指摘されていましたが、ここまで日本語人材のすそ野が広がればその問題はないと思います。

この信念から日本語教育の世界に関心が強まり、自身が講師として、外国人に日本語を教える立場になりました。

今では、日系企業において海外現地スタッフへ日本語教育することが主流です。海外経験が長い内野先生だからこそ、いち早く「気づく」ことができたのですね。


Q2.ベトナム人学生の「語学スキル」の高さは、どのようなところに感じますか?

A.ベトナムの方々は、コミュニケーションスキルが非常に高いと感じます。これは語学スキル(語彙力、聴解力)とは違い、文化だと思います。

人を選ばず、だれとでも「垣根かきねが低い(抵抗なく、スムーズに)」コミュニケーションが取れるところにスキルの高さを感じます。


Q3.反対に、ベトナム人の「語学習得」の課題は何だと思いますか。

A.「言語習得」においては、特にないと思います。ただし、卒業して日系企業で働くうえで、日本のビジネスマナーに苦労するベトナム人は多いと聞きます。

これは、

  • 報連相ほうれんそう」が苦手であること
  • 「情報共有」が少なく業務の進捗が分からないこと
  • 計画的な行動が苦手で、段取りが悪くなること

こうしたことが例として挙げられます。


Q4.「課題」をクリアするために、どのような取組みが必要だとお考えでしょうか。

A.私はハノイにおいて、ベトナム人学生と日系企業駐在員の間に立ち、双方の意見を聞いています。ここで感じたのは、「大学と企業の距離の遠さ」であり、「大学と企業を近づけるような授業」をしたい、と考えました。

具体的な授業内容は以下の2つです。

  • 企業が学生向けにご講演、Q&Aを通して社会人との交流をする。
  • 学生が企業ヘ訪問し、インタビューを実施する

また、ビジネスコミュニケーションスキルを付けてもらうために、「プレゼンテーション講座」をカリキュラムとして、学生たちがチームを組み、内容を考え、調べ、まとめて、準備します。プレゼンはハノイに住む日本人に向けて発表し、評価を受けるまでが一つのカリキュラムです。

プレゼンテーションテーマ例:

  • 「ハノイに2年間住んだ日本人に本当のベトナム文化・社会・自然・生活に触れることができる2泊3日の旅行計画」をプレゼンする。
  • 「職場における日本人社員とベトナム人社員のコミュニケーション齟齬」について企業へ調査しに行き、日越の文化の違いについてプレゼンする。

私たちは2019年10月に開催されたこのプレゼン大会に参加してきました。生徒さんそれぞれが一生懸命話す姿、姿勢がとても印象的でした。


Q5.先生が教えた卒業生は、どのくらいの割合が日系企業に就職しますか?

A.70~80%の学生が卒業後日系企業に就職します。また、在学中に日本へ留学する学生(国費留学など)も年々増えています。最近では学科全体の15%の学生が日本に半年から1年間留学に行きます。ちなみに、6年前は、わずか5%ほどでした。


Q6.今後もますます日系企業で活躍する人が増え、日本への関心が高まりそうですね?

A.はい。ハノイに来た当初、5,6年前は「大学と企業の距離の遠さ」を感じ、企業や学生からは以下のようなコメントを良く聞きました。

日系企業のコメント

  • ベトナムの大学って、どんな教育をしている?
  • 大学の日本語学部と、日本語センターはどう違う?
  • 日本語ができるのと、日本企業で仕事ができることは違うことだ。
  • ベトナム人はどうして1年も経たずに会社を辞めてしまうのだろう。

ベトナム人学生のコメント

  • 会社には、通訳・翻訳のほか、どんな仕事があるの?
  • ハノイには、どんな日系企業があるの?
  • (情報が少ないので)就職先は卒業してから探すか、親戚・友人から紹介してもらいます。

これが私がビジネス系の日本語教育に力を入れた理由です。
しかし日越間のビジネスの拡大と企業側と大学側双方の努力で、今はずいぶん近づいたと思います。


Q7.日本で働くベトナム人が増え、同時に犯罪件数も増えていますが、この状況をどう感じますか?

A.ニュースをみるたび、心を痛めております。彼らは、家族の期待を背負って夢をもって日本に行ったはずなのに、手数料や渡航費として100万円を超えるような借金を背負わされ、日本では劣悪な環境で低賃金で働かされ、借金を返すめども立たず、犯罪に手を染めてしまっているケースが多いように見受けられます。悪いブローカーなどに、だまされないようにしてほしい、と強く願っています。

また、不法在留者に関するニュースも見ますが、ベトナム人が国籍別で1位という状況は大変残念なことです。外国人材を受け入れる日本側が、きちんとした就労ビザを与え、外国人が安心・安全に働きやすい制度を設けるべき、と考えています。


Q8.「日本ではたらく外国人」の未来はどのようなものであるべきだとお考えですか?

A.今回のラグビーワールドカップの日本チームが近未来の日本のあるべき姿を示してくれたと思います。30人の日本代表チームのメンバーで15人が日本以外の国の生まれです。目の色、肌の色が違う選手たちが日本のために戦いました。多くの日本人がその姿に感動を覚えたはずです。

今後5年から10年でベトナムの経済力は大きく成長しグローバル化が進みます。そうすると働く先が日本だけに限られず、ヨーロッパ諸国やオーストラリア、ニュージーランドなど、さまざまな国に可能性が広がります。

そのときに日本が今のように、外国人を「特別扱い」しているようでは、日本へ働きに来てくれる外国人はいなくなってしまいます。この点は、日本側が真剣に、今、考えなくてはならない問題だと感じています。

日本語教育を通じて、ベトナム人と関わる内野先生だからこそ、この問題点を真剣に捉えていらっしゃると感じました。


Q9.最後に、日本語を学ぶベトナム人に向けて、メッセージをお願いします!

A.日本に興味をもってもらえて、日本語を学ぼうとしてくれていることに、ありがたい、感謝の気持ちがあります。日本語を使って、社会で活躍し、プロフェッショナルになることを目指してほしいと願っています。

日系企業で働き、日本式ビジネスの中でたくさんのことを吸収し、成長していってほしいと思います。

また、これからの時代は、日本語に加えて、国際共通言語である「英語」も勉強してほしいと思います。あなたのキャリアの可能性は日本だけに限らず、世界に広くビジョンを持ってほしいと思います。

みなさん、日本語の勉強を、がんばってください!


まとめ

ご自身のキャリア経験を最大限に生かした学習メソッドを、ここベトナムの地で確立し、日本語教育に革新を与え続けている内野先生のご活躍を深く知り、勉強になりました。

1人でも多くの方に、「ベトナムのために働く日本人」のことを知ってもらえたらうれしいです。

内野先生、jNaviインタビューにご協力いただき、ありがとうございました。

ハノイ国家大学外国語大学 研究室にて

取材先:Đại học Quốc gia Hà Nội /
    Vietnam National University, Hanoi/
    ハノイ国家大学外国語大学(ベトナム国家大学ハノイ校)